《夢4夜》長田原(原作 夏目漱石「夢10夜」)2017/10/01 at 東京文化会館小ホール

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小刻みの小太鼓の音、静寂、小刻みの小太鼓の音にピアニッシモのヴァイオリン!
時空も空間も歪む夢の世界へ誘うのにぴったりのイントロだった。

作曲者長田さんは20年アメリカに住む日本人。
奏でられる音楽はまさに邦楽らしい幽玄の世界と、
ウエストサイドストーリーのリズムが頭をよぎる洋楽の世界を行き来する。

4つのストーリーはオムニバス形式で進み、各々が絡むことはなかった。

「無」を悟れない武士の心象風景
豚に舐められて命を落とす俗人(豚のぬいぐるみを使った演出に客席から笑いが起こった〜笑)
100年前の過去の記憶が戻る父親の話
100年待ってねと言って亡くなった女性の話

音楽は3次元ではなく4次元で縦横無尽に飛び回る。
ストーリーに寄り添うように。
捉えどころのない音楽は夢の世界にぴったりだった。

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4つのストーリーの演出について

「無」の境地に達することができない武士の話

イントロが終わると舞台中央の柱が下から光が上がって来た。鋭利な刃物のイメージだろうか。白装束を来た武士がセンターに座り込んでひたすら歌い続けた。和尚に難題を突きつけられるときには木魚(ウッドブロック?見えませんでしたのでわかりませんが)の音がなり、臨場感がある。後半で二人の女性が彼を挟んで悟りを開け、耐えよと歌うハーモニーはとても美しく、俗界のものとは思えないものだった。時計が時を告げると彼は死を選ぶ。彼は苦悩から解放され成仏したのだろうか、あるいは悶々と苦悩の底なし沼に落ちたのか、どちらだろうか?

豚に舐められて命を落とす俗人、庄太郎

チャラ男くんの正太郎は爪楊枝を加えて、白いパナマ帽を被っている。全身白ずくめで如何にも遊び人で能天気。通りの女性を眺めたり、お店を覗くくらいしか能がない。舞台には斜めに四角柱が置かれていて、そこを豚のぬいぐるみが登ってくる。庄太郎を紹介した歌い手が棒を使ってぬいぐるみを庄太郎の方に歩かせる。庄太郎は自分のステッキで振り払うが次から次へと登ってくる豚に性根尽き果て、最後の大きいぬいぐるみに舐められて、命を落とし、ぬいぐるみが庄太郎の上に乗る。大きいぬいぐるみとのやりとりは庄太郎自身が自分で動かし演技をする。ぬいぐるみがまるで生きているかのように庄太郎を舐め彼の上に乗るように操作する庄太郎役のジェシー・マルジィリーは演技も流石だ。

100年前の過去の記憶が戻る父親の話

長めの間の後、青い細い光が客席を往復する。まるで、過去に戻るおまじないをしているかのように。白い短い蛍光灯が6本入った網のリュックを背負い、蜂よけのようなメッシュを頭からかぶり、長い蛍光灯を杖にして、主人公の父親は客席を歩き回った。原作を読んだ時の私のイメージとは程遠い衣装に驚いた。過去を振り返るというよりは未来を見ているかのようだった。子供の台詞も父親の台詞もその彼と、舞台上の3人の合唱が分担しながら歌っていく手法は面白かった。重くなった子供(100年前に殺した男性)を自覚した父親は四角柱に押しつぶされる演出もなかなか考えられていると思う。

100年待ってねと言って亡くなった女性の話

瀕死の女性とその彼、そして瀕死の女性の声を担当する女性の3人で舞台は進んでいった。瀕死の女性はまるで、彼女の精神が浮遊するかのように客席をゆっくりと無表情に歩いていく。彼女が亡くなったことを悟った彼がしゃがみこむと、声担当の女性がそっと彼の背中に手を当てて100年経って彼女の魂が蘇ったことを表現するあたりは演出家アレック・ダフィーに拍手を送りたい。

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管弦楽は東京音楽コンクール受賞者

VIo2名 Va Vc Con Flu Cla Fag Hor Per Piano 計11名
指揮 謙=デーヴィッド・マズア
演出 アレック・ダフィー
キャスト マリサ・カーチン(sop)
ジェシー・マルジィリー(bar) 他4名

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